痴漢で適応される法律
痴漢で適応される法律は、次の2つです。
要件は「13歳以上の男女に対して、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者」または「13歳未満の男女に対してわいせつな行為をした者」で、刑罰は「6ヵ月以上10年以下の懲役」です。罰金刑はなく懲役のみです。
「迷惑防止条例」は、各都道府県が制定する条例です。
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という名称のところもあります。
条例の中身は、各都道府県ごとに若干の違いがありますが、「公共の場所や乗物内において、人を著しく羞恥させたり不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない」という規定があります(痴漢行為の内容まで細かく明記している条例もあります)。
罰則はおおむね「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」、常習の場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。
迷惑防止条例違反で裁かれた場合にも前科はつきます。
痴漢行為をどちらの罪で取り調べ起訴するかは検察が決めます。
強制わいせつ罪か迷惑防止条例違反かによって刑罰は異なりますし、示談金や保釈金の額も変わってきます。
一般的によく言われる線引きは、
- 下着の中まで手を入れた場合は「強制わいせつ罪」
- 衣類の上から触った場合は「迷惑防止条例違反」
です。
強制わいせつ罪で規定されている「暴行や脅迫」とは「相手の反抗を著しく困難にさせる程度のもの」を指します。
殴ったり、言葉によって脅したりしなくても、強制わいせつ罪は成立します。
また、被害者が13歳未満であった場合には、痴漢行為の内容を問わず強制わいせつ罪が成立します。

悪質な痴漢には強制わいせつ罪が適応され、罪も重くなるというイメージを持つとわかりやすいでしょう。
強制わいせつ罪は親告罪ですので、被害者が告訴を取り下げれば不起訴に終わります。
しかし、いったん起訴されれば、略式起訴ではなく通常の裁判で裁かれるので身柄の拘束が続きます。
強制わいせつ罪の示談金が高額になるのは、痴漢行為の悪質さに加えて「告訴を取り下げる」という刑罰に対してのイニシアティブも被害者が握っている為です。
一方、迷惑防止条例違反は親告罪ではないため、示談が成立しても起訴されることがあります。
しかし、起訴された場合も略式請求(略式起訴)という書面審理の手続きで裁判が終わり、すぐに釈放される可能性が高くなります。