痴漢冤罪を証明するには
やった覚えのない痴漢で逮捕されてしまった場合には、冤罪であることを証明しなければなりません。
ここでは、冤罪逮捕された方を「被疑者」(犯罪捜査の対象者)という呼び名で記していきます。
被疑者の冤罪を証明する方法には、2つのアプローチがあります。
「していないことの証明」は俗に「悪魔の証明」というくらい立証が難しいものです。

例えば、防犯カメラ等の映像に写っていればそれを検証します。
被害者と被疑者の距離、被疑者の手の位置などが判断材料になります。
映像に痴漢の瞬間が映っていなくても冤罪を立証することはできません。
痴漢を行なうことが不可能だとわかる映像がある場合に限って冤罪の証拠になります。
被疑者が両手に荷物を持っていたとしても、荷物を持ちながら、または荷物を床に下ろした隙に被害者の体に触ることは出来ると考えられます。
被害者と被疑者の間に他の人がいた場合でも、手を伸ばせば届く距離であれば痴漢行為は可能と判断されます。
映像から冤罪を証明出来るのは稀です。
例えば、被疑者が常に両手でつり革を持っている姿が映像に残っていて、なおかつ被害者が手で触られたと証言している場合には、冤罪を証明出来る可能性があります。
痴漢をしていないことの証明を物理的に証明するのは非常に困難です。
「痴漢の加害者ではない」と心証的に訴える証拠も出来る限り揃えます。
例えば、「被疑者は1人ではなく家族や友人等と同乗していた」「大事な仕事に向かう途中だった」など、痴漢をする可能性は低いと訴える状況証拠や、「逮捕された当初から自分ではないと否定し続けている」という被疑者の証言の一貫性や信憑性です。
痴漢事件の場合には被害者の証言が大きな証拠になるため、まず被害者の証言の矛盾点を探します。
冤罪逮捕されてしまった理由として考えられるのは、
- ①被害者の虚言
- ②鞄や傘などが当たったのを勘違いした
- ③人違い
などです。
ひとつずつ検証していきます。
痴漢被害をでっちあげだと決めつけるのは被害者の尊厳に関わることなので、慎重に行なわなければなりません。
被害者と被疑者の間に面識やトラブルはないか、被害者がお金に困っているなどの特別な事情はないか、などが判断材料となります。
また、虚言である場合には、被害者の供述に矛盾点が生じている場合が多々あります。何か思い当たるものがあれば、名誉毀損等で被害者を訴え、裁判で争う方法もあります。
痴漢行為のあったとされる車内の込み具合や、被害者と被疑者双方の証言から可能性を探ります。
完全に痴漢行為がなかったと証明するのは難しいですが、体に触れていたのは鞄だった可能性が高まれば被害者も被害届を取り下げたり、示談ができる可能性も高まります。
真犯人を見つけられればいいですが、ドラマのようにはいきません。
やはり被害女性の証言の矛盾点を探すことから始めます。
具体的にどこから手が伸びてきたのか、どのようにして痴漢の加害者を認識したのかなどを検証して、被疑者ではない別の加害者が存在する可能性を探ります。
日本の刑事裁判は「疑わしきは罰せず」という「推定無罪の原則」を採用しています。
本来ならば有罪を決定付ける証拠がなければ無実の判断が下される筈です。
しかしながら、痴漢行為を含む性犯罪に関しては、被害者の証言が大きな証拠として扱われます。
痴漢事件の場合には、被害者の証言の矛盾点を探し「被疑者が痴漢を行なうことが難しい」ことや「勘違いや人違いの可能性」という小さな証拠をコツコツ積み重ねて、冤罪を証明しなければなりません。