釈放・保釈
まず始めに、釈放=無罪ではありません。
罪を認めている場合はもちろん、無罪を主張して争っている場合や示談が難航している場合でも釈放は可能です。
釈放とは身柄拘束が解かれることを差す一般的な言葉です。
起訴前の身柄拘束は、逮捕・拘留期間で最大23日あります。
起訴前に釈放される場合としては、次のようなものがあります。
逮捕後身柄を検察庁に送られずに、すぐに釈放される場合です。
痴漢事件の場合には、警察官の説教のみで帰されることは想定しにくいため、逮捕後は検察庁に身柄を送致することが予定されています。
警察官が身柄を拘束する主な理由は、「犯罪者だから」ではなく「証拠隠滅や逃亡を防ぐため」です。
警察が身柄拘束出来るのは最大48時間です。
限られた時間の中で「被疑者に証拠隠滅や逃亡の可能性がない」と確信させることは容易ではありません。
検察官は10日間の身柄拘束(勾留)の後、必要があればさらに10日間追加で身柄を拘束することができます。
手続き上、検察官は裁判所に対して勾留請求を出し、裁判所の勾留決定を得て被疑者の身柄を拘束する権利を得ています。
このことから勾留を阻止するには、
- 検察官が勾留請求を出さないように働きかける
- 裁判所が勾留決定を出さないように働きかける
- 勾留決定に対して不服(準抗告)を申し立てる
の3つが考えられます。
勾留する主な理由も逮捕の時と同じく「証拠隠滅や逃亡を防ぐため」です。
検察官による取り調べが進んでいる段階では、逮捕直後よりも釈放される可能性はあります。
「痴漢行為を認めていて供述内容が被害者のものと一致している」「被害者と面識がない」という事情は、証拠隠滅の恐れや被害者に危害を加える可能性が少ないと判断出来ます。
また「定職がある」「同居の家族がいる」という事情は、逃亡の恐れが少ないと判断出来ます。
このような事情をふまえて書類を作成し、検察庁または裁判所に勾留を解いて釈放するように働きかけを行なうことになります。
無実を主張している場合には「証拠隠滅の恐れがある」と裁判所が判断することがあるため、罪を認めている場合に比べ釈放は難しくなります。
しかし事情によっては釈放の可能性がない訳ではありません。
保釈は、刑事訴訟法に定められている当然の権利です。
- 被告人本人
- 弁護人
- 法定代理人
- 補佐人
- 配偶者
- 直系の親族・兄弟姉妹
が、裁判所に対して保釈請求を行なうことができます。
証拠隠滅や逃亡の恐れがないこと、被害者に危害を加える恐れがないことなど、一定の条件をクリアしている場合には保釈が許されます。
また保釈されるには、保証金と身元引受人が必要です。
保証金の額は150万円~300万円くらいが通常事件の目安となりますが、事件の内容や被告人の資力によっても異なるので一概には言えません。
「保釈請求」→「保釈決定」→「保証金納付」→「保釈」の流れになります。
保釈請求から保釈決定までの期間は3日程ですので、保釈請求の準備とともに保証金の手配も進める必要があります。
保釈決定がされても、保証金が納付出来なければ釈放されません。
身元引受人については法律上規定はありませんが、保釈が許可される為には必要不可欠な存在です。
身元引受人の条件は、保釈後の被告人が証拠隠滅や逃亡を計らず公判に出廷するように促せる人物であることです。
通常は被疑者と信頼関係のある同居の親や配偶者など身内がそれに当たります。
同居人がいない場合には、恩師や上司などが身元引受人になることもあります。
専門家が依頼を受けると、保釈に全力を注ぎます。
長期間の身柄拘束は精神的社会的ダメージが大きく、後の裁判や社会復帰にも大きな影響を及ぼします。
専門家は被疑者や家族と打ち合わせを重ね、「証拠隠滅の恐れがないこと」「逃亡の恐れがないこと」「身元引受人がいること」などを保釈請求書に記して、保釈請求を行ないます。

保釈請求後、弁護士が裁判官と直接面談をする機会が与えられることがあります。
面談が実現すると、弁護士は保釈の必要性について裁判官に強く訴えかけたり、保釈金についての交渉等を行ったりして、保釈の実現に努めます。
保釈許可が出ずに却下された場合にも、もう一度保釈を請求する手段はあります。
釈放・保釈には、専門家の働きかけが大きなカギを握ります。
早期の釈放・保釈を目指す為には、一日も早く専門家に依頼することが重要です。